新作ではないので、もう観た人はいるかと思います。私はやっと観れたので、感無量のまま書いています。
Anthony Hopkinsの演技力が素晴らしいのは言うまでもないですが、この映画は彼のベスト3に入る作品だと思います。80歳を過ぎてこの演技、彼はレベルが違う最高の俳優です!!
役名もアンソニー。彼は認知症で娘のアンが時々尋ねてくれる。でも認知症が悪化しているのに誰の世話にもならないという頑固者なので、アンが父を家に呼んで面倒をみる。でもアンには夫がいて、夫は病気なんだから施設に入れようと言う。
これが現実なのだけど、映画はアンソニーの視点で描かれているので、認知症を疑似体験出来ます。
アンソニーの行動や言動は、介護職の私には決して驚く事ではありません。自分でキッチンに立っている時の動きなど、とても80代には見えないくらいキビキビしています。
だから余計に病状が悪化していても見えない部分だからそのギャップが上手く表現されていると思いました。
いつもきちんとした洋服を着ているのに、だんだん服装が変わっていくところなど、病状が悪化しているのと比例しています。
父が『私はダンサーだった。』と言うと娘が『エンジニアでしょ?』と言うシーン。これ現実で絶対ありますよね。娘はまだ父が重度認知症だと認めていないからこういう発言をするのです。絶対に子供の立場では真実を言ってしまいます。
私の母も認知症です。こういう状況、母と姉の会話でよく見ました。後で姉に真実でなくても否定するなと言ったら、姉は真実ではないのだから正すべきと言う考えでした。認知症を本当の意味で理解していないと、この境界線で身内もイライラすると思います。
ここは私の家なのか?
腕時計はどこに行った?
朝だと思ったのに夜だった。
知らない人が家にいる。
このような事、認知症の人にとっては日常茶飯事です。だけどいくら理解していても、認知症側からの視線で見ると、それは混乱するわ!!と思いました。
自分の娘すら違う人に見えるなんて、それはどちらからしてもとても辛いと思います。
この映画で、娘に好きな人が出来てその人とパリで生活する事になった、という会話が一番最初だったのですが、アンソニーの世界では、次にはアンには夫がいて、その男性がここは自分の家でアンソニーは引っ越しして来ただけという形になっていて、アンが帰って来ても自分の知っている娘ではなく別の女性だった。
ヘルパーの女の人が来てくれたけど、その次には別の人が来て、話の中では同一人物らしい。
アンの旦那も別の人に変わっている。
アンはパリで生活するなんて言ってない。ここにいるから、と言ってくれる。
アンの夫に、アンは好きな人が出来て一緒にパリに行くって聞いていないのか?と言ってしまう。
もうこのあたり、めちゃくちゃで一体どれが真実なのか、本当に観ている側も困惑します。これが認知症なんだと思います。
この映画、最後の最後、泣かずにはいられない状況になります。同じ状況になった事、何度もあります。それだけ一般的です。だけど、自分の世界と現実を行ったり来たりしている時が一番辛く、最後の瞬間でもう認知症の世界に入り切ったので、後は静かに生きていけると思いました。
認知症でも相手を見て言葉使いを変える必要があります。アンソニーは最初『大人の男性』だったけど、最後は『子供』の部分が出て来ます。最後の看護師の話し方は、私たちが入居者に話している内容や口調と全く同じでした。
仕事が忙しくて大変でも、ちゃんと入居者さん達の言葉に耳を傾ける時間をもう少し作ってみようと思いました。
ちなみに私の母は、このような精神状態を数年過ごし、一人暮らしが不可能になり本人の希望もありグループホーム入居となりました。あれだけホームなんて絶対に嫌だと言っていたのに、最後はあっさりでした。でも自分の家がある事をずっと気にして帰らなければいけないと思っていたけど、その感情も1年経てばなくなりました。母はもう完全にグループホームでの生活がメインになり、楽しんでいます。
私の事は覚えていたけど、忘れられたとしても私は悲しいとは思わないでしょう。人一倍この病気を理解しなければいけない環境にいるし、私の知っている母はもういないのだから、今は母が楽しく幸せならそれで十分です。もう尋ねなければいけないとかのプレッシャーもないし(1年ぶりでも1年の感覚がない)いろいろ言われる事もなくなったので、私も肩の荷が下りました。👍
私は将来どうなるかわからないけど、認知症になるなら母みたいに明るい認知症は理想だなと思っています。😁
この映画、介護経験者や身内に認知症がいる人には絶対お勧めですが、これが現実だと受け入れられる人のみ観た方がいいと思います。多分これを、これからの自分の将来に起きるのかと思うと悲しいとか不安だと思う人はまだ早いかもしれませんね。
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