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デンマーク介護現場状況への回答です

先日の記事に介護現場に対する質問が来て、凄く考えました。質問を書いて下さったMimingさん、ありがとうございます。ここで返事を書きたいと思います。

老人ホームから入院する人もいるということですよね。

これは当然ですが、あります。

まずデンマークの老人ホームに入居している人たちのほとんどは在宅介護が不可能な人たちですし、重病を抱えている人や病院で治療困難と判断された人たちが多い為、その病気が理由で入院する事が少ないのです。

デンマークの場合は日本と違って自分の意思で病院には行けません。まずは主治医の判断で病院に紹介状を出して貰い、病院から連絡が来て初めてその専門の科に行けるのです。

ただ老人ホームにいる人たちは主治医ではなく、ホーム内の看護師の判断になりますが、基本は緊急の場合になるので、救急車対応になる時に入院という状況がほとんどです。

例としては、

高熱の場合。

これも基本は看護師に連絡し、入院の指示が出たら救急車を呼ぶ。救急隊員が病院に運ぶかどうか判断します。なので高熱でも40℃超えじゃない場合や肺炎の症状がない場合はホームで様子を見るようにと言われる事もあります。

転倒の場合。

転倒してもただ滑っただけとか、車椅子から落ちただけで、手足を動かしても痛みがなければ記録のみで様子見。高齢者の場合、後から痛みが出て来るのですが、残念ながらそのまま放置になってしまう事もあります。

転倒して一発で救急車を呼ぶ必要があると見た目でわかる場合は看護師を飛ばして救急車を呼びますが、一応看護師に連絡する必要もあります。

ちなみに骨折で手術が必要でも数日でホームに戻って来ます。なのでホーム側と病院がきちんと協力体制がないと、必要な介護用品を揃える前に戻って来てしまい対応が大変な場合もあります。

脳梗塞の場合。

明らかに脳梗塞の症状が出たら救急車を呼びます。ただ高齢の場合はいくら救急車を呼んでもその場で検査して、様子見と対応される事が多いです。そしていくら病院へ行っても治療はなくすぐに戻って来る場合が多いです。

デンマークの場合、病院に入院すると言うのは、その状況の治療目的のみなので、回復のための入院はありません。まして老人ホームの入居者の場合は、入院が必要でもすぐに戻されてしまいますし、金曜日の間に戻って来て週末に入院患者を減らすという行為は日常茶飯事です。

治療を受けられない人と入院できる人という対応の違いは、どこからくるのでしょうか?

治療に関する費用は国が出すので患者本人は無料で治療を受けられます。なので高齢の場合で治る可能性が低い場合は何もして貰えません。

デンマークは高い税金で有名で、治療費は無料ですが、高齢の場合は後回しになる可能性が高いです。癌患者でも60代ならまだ治療が受けられても、80代なら何もしない方がいい場合もあります。進行性の癌の場合なら高齢者は緩和ケアのみです。

現在癌と戦っている60代の友人がいますが、彼女が入院していたのは体調を崩した数年前で、何が原因かしばらく発見出来なく3都市の病院で入院、検査していました。

現在も時々抗がん剤治療で病院に通っていますが当日のみで終われば帰宅、貧血で輸血のために1日入院などありますが、終わったらすぐ退院です。

彼女が起きれないほどの体調不良だったり意識がないならそのまま入院になると思いますが、そうじゃなければ帰されます。それがデンマークの病院の『入院』の意味になります。

日本と違って『病院』そのものがたくさんないし自分で選べません。

過度な治療はどうかと思いつつも、急な体調変化が原因不明のまま放置されるようなことがあるとしたら、家族としてはやりきれない気がします。

これはデンマーク人の人生による考え方の違いで、老人ホームに入るという事はもう最後の時間だと考えている家族が多いので、ほったらかしにされているわけでなければ過度な要求をする人は少ないです。中には自分の親を優先にと言う人もいますが、そういう人たちは文句を言うだけで、自分たちで動いてくれない事が多いです。

急な体調不良などは上に書いた通りに看護師や私たちの判断で救急車という対応ですが、その救急隊員が病院へ運ぶ事を勧めなかったり、病院に送ってもすぐに帰される場合があるので、やる事はやってもそれ以上進まない事が多いです。

例を一つ。

98歳の女性がどう見ても脳梗塞っぽい症状があったので、仲間と相談し一応看護師(遅番なので外回りしている看護師)に連絡すると、看護師は忙しくて来れないので救急車を呼んで良いとの事でした。

救急隊員は4人もやって来て、みんな血圧など測り様子を見ました。多分脳梗塞かもしれないけど、その女性は元々重度認知症で失語になっていた事もあり、会話も出来ず返答も出来ません。なので、その人が脳梗塞になって病院に運んでも結果は同じだし、98歳なら動かさずにこのままホームで最後を迎えた方がいいだろうと言う事になりました。

彼女はドイツ人、家族もドイツ在住で夜に連絡しても来れるわけもなく、元々蘇生拒否だったので、そのまま様子見になりました。

彼女はそれから1ヶ月くらい寝たきりで亡くなりました。

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最近80代の女性が意識を失い脳梗塞のような症状があり、救急車を呼びました。しかし救急隊員は血圧が急激に下がっただけと判断し、彼女はそのままホームで様子見になりました。しかしその後明らかに左半身に麻痺があり、立位も取れず車椅子となりました。状況からするとその後にも脳出血ような状況になり、多分2回続けて起きたので、もう対応はありません。ご主人も理解しているし、ご家族も状況を受け入れています。

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日本の高齢者は病院が好きで、自ら病院に行く人が多いですが、デンマークでは主治医に行く事すら嫌がり、まして病院と聞くと拒否する人が多いです。(私の義母も断固拒否派です。)

高齢になれば、病気になっても仕方ないと考える人が多いです。コロナの時のようにいくら気をつけても感染する時は感染します。あの時家族誰一人としてなぜ私の親がコロナになった?と文句言う人はいませんでした。

これはもう考え方の違いでどちらがいいとか言えません。治療は無料だけど自分では一切選べない状況と、自腹だけど自分で病院や医者を選べる事、どちらがいいかわかりません。ただデンマークは元々こういう状態なので文句言っても選択幅がほぼないという事です。だったら自分の残りの人生、元気なうちにやりたいように生きたいと思っている人が多いです。

今の私はデンマーク人化しているので、夫と話し合って病気になった時どうしたいかなどの話をして経管栄養をするなら死を選ぶとお互い決めました。その時が来たら何とかして生きようとするのではなく、自然に任せる事にします。だって自分の人生に後悔はないから、いつ最後が来てもいいように毎日楽しく生きようと思っています。

多分デンマーク人は高齢になる前からその時が来る事を理解し、更に老人ホームに入る頃はもう病気と戦うような努力をしない、静かに生きる状況になっているので日本とは違うと思います。

後一つ、人間ではなくペットですが、デンマークでは安楽死がほとんどです。日本では絶対に反対でしょうし、ペットを殺すなんて出来ないと思うでしょう。

でもデンマークでは小さな体で病気と戦わせる事の方がかわいそうだし、いくらお金をかけても治らないし、死を長引かせて苦しませるのなら今その苦しみを終わらせようと考えるのが自分のペットへの愛だと思っています。

私は今ペットがいないので、安楽死を受けいれられるかわかりませんが、苦しむ入居者達を間近で見て来たから早く終わらせてあげたいと思う気持ちは理解出来ます。

長くなりましたが、デンマーク人の考え方、病院のシステム、金銭的な事などが全て今の状況になっています。それが良いとか悪いとかではないですし、高齢者達が治療&病院を拒否する事が多いので、老人ホームから病院へという事も少ないのだと思います。

ちなみに私の義父(2016年他界)はペースメーカーを入れる予定で病院まで行ったのにその場で拒否し全ての治療も拒否して何もせず死ぬ事を選びました。義父のような人、決して珍しくありません。日本に住んでいる日本人にはなかなか理解しづらいかと思います。だから日本人は長生きしていてデンマーク人の平均寿命はそこまで高くないという事です。

"義父とのお別れ"←今でも鮮明に覚えている、義父との最期の時です。

by Helgashjemdk | 2025-12-02 07:59 | 仕事 | Comments(0)